沖縄本島
2003
フクギに囲まれた白いマッス
敷地は、約280年前の琉球王朝時代に建てられた、上層農家の代表的な規模、形式を完備している住宅、中村家に程近い北中城村の古い村落の一角に位置する。周りには、樹齢数百年にもなる常緑樹、フク木が家々を囲うように生い茂っている。フク木は沖縄では、家の周りを囲い、いにしえより風除けとして使われていた。 石垣とフク木、赤瓦屋根の情景は、沖縄の原風景の象徴であり、多くのアーティストのキャンパスに納められた。そのフク木のほのかな花の香りに包まれながら、建物内へと導かれていく。扉を開くとそこには、コート側の琉球ガラスから差す光によって、黄色の空間が広がり、床に張られた琉球石灰岩を辿りながら、玄関へと繋がる。
建物は、クライアントの要望、敷地の環境等を総合化し、平家でコートハウスの形式が最適であると考えた。結果、コートを囲うようにプライベートスペース、パブリックスペースと奥様のピアノレッスンルームを配し、単純明快な動線を確保すると共に、常にコートが家族の中心の場として利用できるようにした。
コートには、元々あった井戸を再利用し、水を循環させ、小川のせせらぎのように演出する。 ささやかな水の流れとわずかな水の音は、人を心地よくさせ人を和ませる。そうすることによって建物の中にも自然が取り込まれ、気持ち良い空間、 生きることの喜びを感じられる生活が営まれるであろうと考えた。