下り傾斜に建つセカンドハウス
先島諸島竹富島の島々と水平線を眼下に見渡す、石垣市新川の下り勾配の傾斜地に建つ住宅は、東京近郊に住むドクター夫妻とTOMO君が月に1~2度のペースで訪れる為のセカンドハウスである。
求められたのは、都会の喧騒とハードワークから逃れるように、家族が非日常的な空間、自然の光や風、景色を取り入れ、明るく開放的な住まい、というイメージだった。この敷地が持つ元々の輪郭を変えず残しながら、「自然」に対して開かれた住空間を正方形に近いコンクリートの塊として基壇の上に据える。海を望むようにLDK、仕切りの役割を担うキッチン、リビング棚を挟み山側にはMBRとふた部屋の個室、そしてサニタリースペースが配された。
島々と水平線のロケーションを享受する、パブリックスペース(LDK)とプライベートルーム(各個室と水周り等)は、建物の核に据えられた長さ13mの棚によって空間が仕切られる。LDK側からはキッチン・リビング収納、ギャラリー廊下側には、本棚と絵画がアートされた。そしてその仕切り棚は2,700mmの天井高さより400mm開けられ、リビング側からの海風を各個室まで流れるよう、通風が工夫されている。
クライアントが望まれた、リビング・ダイニングからはテラスを介して、眼下に広がるコバルトブルーの海に風が吹き、広い海面のあちこちに白いさざ波立つ風景、透き通った青空にはジェット気流に沿ってできた、ジェット雲が現れては消える様を室内に居ながらみる事ができる。そして夕暮れが迫ると共に、満天の星が輝きはじめる。ここではまさに都会では体験できない森羅万象の豊かな出来事と共に時間が刻まれて行く。
家族が週末や僅かな休日を石垣島の自然や島の人々と触れることによって心身共に癒され、時間が止まったようなゆったりした温かな生活がこの島で営まれることを願っている。
2017年 九州建築賞 住宅部門入選 |