森の中のセカンドハウス
場所は石垣島の北東にある伊原間区域。県道79号線を隔て東シナ海伊原間湾が一望でき、振り返ると斜面に沿って鬱蒼とした樹々が生い茂る200坪強の敷地に建つ。
ドイツ人の御主人と日本人の奥様のクライアント夫妻は、東京在住。数年前から温暖な沖縄にバカンスで何度か訪れ、その中でも自然が豊かで珊瑚礁の海が美しい石垣島に魅力を感じ、この島にセカンドハウスを建てることを決意した。土地の選定はやはり海が望める事を第一条件に土地を購入、今回の計画がスタートした。
早速、我々はオファーを受け本島からジェットに乗って敷地の調査とプログラムを聞き設計が進んでいった。先ず夫妻と我々の共通した意見として、この鬱蒼とした樹々を可能な限り残しながら、建物が森の中に埋れ溶け込むよう古色蒼然たる佇まいがつくれないかという事であった。
建物はサンライズが望める海側に向けて、リビング/ダイニング、寝室を配し、浴槽に浸かりながらもその海を一望できるようにしたプラン構成となっている。屋根は海側から森側に向かって低くなるような片勾配とし、ファサードは可能な限り高く大きな開口部とした。それによって海側に向かって長方形の平面と片流れのある建物のプロポーションが形づくられている。又、森側の緑豊かな斜面をもう一つの主役として、リビング/ダイニングからデッキを介し視線を向けると、コンクリート焼杉板模様の横長に穿った空きからは、緑を抜き取った額縁の絵のような景色が広がっている。
今回の計画は石垣島の自然環境の破壊を最低限に抑え、この建物がもともとこの森で生きてきた生き物と同じように潜んで暮らしてきた事に通ずる姿勢を持つことであったように思っている。そして森では3月から5月にかけてヤエヤマボタルの光の舞を見る事ができ、日が暮れたころ、真の暗闇に包まれた森の中に無数の光の渦が浮かび上がり、幻想的な光のショーが鑑賞できることであろう。
2014年 グッドデザイン賞 |