前原どろんこ保育園
敷地は沖縄本島うるま市にある高台に位置し、背景は緑に覆われ、前面は中城湾を一望できる眺望に恵まれた環境にある。しかし建物を配置する平場がほとんど無く、敷地内で高低差が10m以上もある、急斜面地でもあった。そこで平場に対して要求室を積み重ねて配置したが、周囲の木々よりも建物が高くなってしまうため、周辺環境を考慮し、斜面に沿って配置する低層の建物で計画を進めた。
東側の中城湾に対して敷地が大きく開いており、年間を通して風通しが良いため、曲線状の建物形状にすることで、安定した風を供給することができる。また、十分なアマハジ空間を設けることで、日中の暑い時間帯でも過ごしやすい計画としている。加えて保育室の屋上部分には屋上園庭(芝庭)を計画し、コンクリートの蓄熱を避けるための断熱効果を持たせている。
外壁は沖縄の街並みに馴染みのあるコンクリート打放しのパネコート仕上げとし、一枚の大きな壁の印象を和らげるため、千鳥に縦目地ラインを入れ、陰影を与えることで圧迫感を軽減した。縦目地を入れた外壁は誘発目地としての機能と印象的なファサードをもたらすことができた。
計画地は昔ながらの赤瓦の家々が立ち並ぶ集落の一角にある。伝統的な赤瓦には漆喰を用いるものだが、コストやメンテナンス手間の問題もあり、街中から消え始めているのが現状である。今回、東側の勾配屋根に赤瓦を用いて沖縄の原風景の継承に努めたが、屋根がアール状になっており、在来の赤瓦では加工が困難なため、断熱重ね瓦を採用した。
保育園を運営する法人の育児方針として「野外活動」に重点を置いているため、園児の活動の拠点となるよう園庭と縁側を中心に配置し、その周囲を各保育室が取り囲む計画とした。園庭と縁側を介し、異なる年代の園児たちが交流できる装置として機能している。 園庭には、畑や田んぼ、ヤギ・ニワトリ小屋を設け自然や動物と触れ合える機会を作り命の大切さや食の循環等を学び、園児たちの食育を育む体験学習のひとつとなっている。数年後植樹した木々が成長し、園庭を覆い尽くすような形になったときには野山を駆け回るような体験ができ、他の保育園にはない場所となるだろう。
第15回キッズデザイン賞 |