北谷町立博物館
本施設は沖縄県中部屈指の観光地、北谷町にあって、島を南北に走る国道58号線からすぐの小高い丘に建てられた。隣接する伊礼原遺跡から多く出土した縄文時代の土器を中心に展示・保存し、縄文時代における他地域との交流の証を知る事ができる。施設は国指定史跡である伊礼原遺跡の一角にあり、町全体を「博物館」と捉え本施設をその「入口」としてフィールドを大きく広げた多様なワークショップやイベントを開催し学びの機会を提供している。施設は主に収蔵・調査研究・展示の3つのエリアで構成されていて、収蔵及び調査研究エリアは一階に展示エリアは二階に配置した。展示エリアは常設展示室、企画展示室、研修室と共に北谷ウナーと呼ばれるエントランスホールがありその中には町内の図書館と連携し本を貸出返却ができるスペースも用意された。
その中で、町より要望のあった面積の中では多様なワークショップやイベントを受け入れるまとまったスペースを確保する事は難しかったため、博物館から外部に広がるフィールドとを繋げる交流や体験を生むスペースとして、大きな半屋外空間(あまはじ空間)を設けることとした。その半屋外空間は多様な活動を開催するスペースとして、日常的には沖縄の強い日差しを遮る公園の休憩所ともなり、夕陽を望むスポットともなっている。また一階においても同様な空間を設けることで、収蔵庫への日射を遮る役割ともなっている。同時に限られたスペースの中で半屋外空間は博物館特有の確実なゾーン分けを行う事も実現している。沖縄では空調利用は主に冷房なため、今回基礎をクールピットとして利用しピット内でー3度程度を目標に外気を冷却・取り入れ夏季における冷房負荷の低減を図った。
市町村における博物館の入館者数は年間2万人といわれる中、初年度ということもあるが半年で3万5千人もの人々が訪れている。本施設の完成にあたっては、長年にわたって本案件を支えてきた北谷町内における多数の設計事務所の夢や希望、そして協力があってこそ実現したものである。また担当学芸員の構想時から設計時、共用後の運営を見据えた中で熱い気持ちとリーダーシップを持って関わっていただいたことが利用頻度の高い博物館をつくり上げていることは間違いない。その活動の拠点として特徴的な半屋外の活動空間を持った建物は実現し、今後新たな活動により更なる交流を生む博物館として育まれてほしいと願う。